図書館

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「おっと。ごめんごめん」 「春野くんってうんちく語るの好きだよねー。ほんと、誰に似ちゃったのかしら。物静かな子だったのに、時の流れって怖いわあ」 「僕ら今年にクラス替えで知り合ったばかりだよね? なんでそんな昔から一緒みたいになってるのさ」 「記憶レベルではそうでしょう。しかし魂レベルで私たちは幼なじみなのですよ、春野くん」 「そうだね、意味分からないね。……ま、うんちくというか色々語るのは好きかなあ。自分の知識や理論を展開して相手の意見を打ち負かすのが気持ち良くてね、あの悔しそうな表情が堪らない」 「え、ちょ、春野くん?」 「ああ、申し訳ないね、つい本音が」 「……もしかして春野くんが真面目なのって、口論で相手を負かすため?」 「大方正解。あとは普段の態度に文句をつけられないようにすれば、相手は反論の余地を失うから」 「鬼畜だ! 春野くん鬼畜外道だ!」 「いやはやどうもありがとう」 「私、春野くんが急に怖く見えてきたよ……」 「ん? じゃあ帰る?」 「……いや、私が春野くんを更正させてみせるよっ。とりあえずまずはそのための本を探してきます!」 「っと、行っちゃった。落ち着きないな、小川さんは。……多分一時間もしたら目的忘れてるだろうけど。まあいいや、僕も行くか」 「……さて、小川さん。これは何かな?」 「見てみて春野くん、フランダース! こっちにはハイジもあるよ、懐かしくない? すごーい! やばーい!」 「目的を見失うのに十分とかからなかったね。新記録だね」 「目的……? …………はっ!」 「……素で忘れてたのか。小川さんの脳の忘却構造は実に興味深いね。解明出来れば医療とかに役立ちそうだ」 「うく、悔しい……と、ところで春野くんは何を借りて……『バッハ──音楽の父──』『バッハ』『バッハ』『J.S.バッハ』『バッハ』って、同じタイトルの違う本が何個も……」 「まあシンプルな方が分かりやすいしね。しかしこうもバッハばかりだとバッハがゲシュタルト崩壊してきそうだ」 「いっそ笑えてくるよね。クックック……バーッハッハッハ! って感じ……で……」 「…………」 「いや、今のは……」 「…………」 「その、む、無言はやめて」 「……あのさ、小川さん」 「……なあに、春野くん」 「大丈夫、僕は気にしないから」 「爽やかな笑顔が心に突き刺さる! うわーん、忘れろー!」
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