華を

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右手は、灰皿に。 吸っていた煙草をもみ消して。 左手はゆっくり、あたしに向かって伸ばされる。 「 来いよ。」 いじわるな笑みが称えられた口元に。 行ってはいけないと。 囁く心の声とは裏腹に、すっと上げてしまった右手は、彼の手に届く前に、引き寄せられ、その腕の中に囚われる。 重ねられ、絡まり合う、唇と舌は。 煙草の香りが甘さを打ち消し、崩れおちそうになる膝を、支えてくれる。
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