9人が本棚に入れています
本棚に追加
「えーっと…‥」
視線をさ迷わせながら言葉を探していると、さっきまで少し離れた場所に居たはずの赤西先輩が自分の目の前に来ていて、緊張と驚きから自分はその場に固まってしまった。
「おーい……大丈夫?」
固まってしまった自分の顔の前で赤西先輩は手をヒラヒラさせて首を傾げてきた。
「全然大丈夫です!!じゃ、失礼します!」
我に返り、慌てて教室まで戻ろうと一歩踏み出すと手に持っていた紙袋が手から離れた。振り返ると紙袋を持っている赤西先輩の姿があった。
「これ…‥俺に渡しに来たんしょ?うわ、ウマそー」紙袋の中身を確認しながら先輩は尋ねてきた。
「違います!」
とっさに自分の口から出たのは否定の言葉だった。
「へぇ、違うんだ…。ま、俺に渡したかったって事にしといて?」
しかし、自分の言葉をよそに先輩は紙袋をブラブラさせながら教室へと戻って行ってしまった。
ま……貰ってくれたんだしいっか‥。
自分の贈り物だけを先輩が貰ってくれた‥という優越感がその日はずっと頭から離れなかった。
Fin
最初のコメントを投稿しよう!