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森独特の匂いを孕んだ風が頬をなでる。
辺り一面鬱蒼と木が生い茂るジャングルのような中で、少し開けた場所にそいつはいた。
さんさんと照りつける日光のなか、そいつは近くの石に腰をおろした。
つつぅーと頬を一筋の汗が流れ落ちる。
今まで火照っていた体が石に触れひやりとローブ越しに冷たい感覚が伝わる。
持っていた黒い身の丈ほどもある杖をそばに置き、今まで被っていたローブのフードを外した。
今まで隠れていた少し長い黒髪がそよ風に吹かれわずかにはためく。
そいつは先刻からずっと同じ方向を見ていた。
そいつの視線の先を追うと、何やら商人が乗るようなような馬車が。
なにか問題が起こったのか、今は止まっており少し騒がしい。
ニヤリと口角を上げそいつは呟いた。
「やっと見せたね。待ってたよ、この隙を」
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