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状況が、まず飲み込めない。
洋輔が口にした通り、プロジェクターのような状態。それで、鏡から神奈の姿を映し出している。
だが、会話が出来ているのは不自然だ。
そしてその神奈は、折原家に仕えた一族の当主らしい。
見た目が、中学生の当主と言うのも納得がいかない。しかも、相手は話しが通じるつもりでいる。
「お館さま、よろしいでしょうか?」
「んっ、何?」
「こうしていられる時も、短こうございます。要件だけを、申し上げます」
「えっ、あっ、はい」
「妖界を、お救い下さいませ。それが、ひいては現し世の平和に……」
今は珍しくなりつつあるが、ビデオテープの終わりの如く、神奈の姿は消えてしまった。
それと共に、部屋はいつも通りに戻る。
「えっ、ちょっと……」
洋輔は、鏡を支えた格好で一人取り残された。
そして、謎は更に増えてしまう。
神奈の残した言葉は、耳慣れない単語が多く、まずは単語の解釈から始めなければならない。
その前に、洋輔は床の傷を確認していた。
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