もう一つの聖夜の奇跡

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今年のイヴは土曜日。 俺たちは午前中からプレゼントを含めた買い物に出掛けた。 デパートの調理器具と雑貨の店で、美咲なりに悩みに悩んで小ぶりの圧力鍋を選び出した。 「これにする!!」 美咲は嬉しそうにカートに鍋の箱を優しく入れた。 カートを押しながら店を抜ける途中で、俺が足を止める。 「おい。美咲。」 「ん?何?」 美咲を手招きで呼んで商品棚を指さす。 「…買って行かねえ?」 「…いいの?」 「今日はこれで食おうぜ。」 「うん!!」 そこには茶碗やらお椀、スープカップに皿、箸に至るまで、二組柄違いでそろった食器セットが飾られていた。 俺んとこで食べる時にはいつもあり合わせの食器だったし、美咲もいろんなものが作れるようになってきたから、俺からのおまけのプレゼントのつもりだった。 「素敵だね!」 美咲はお揃いの茶碗を嬉しそうに握っていた。
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