親父とはかくも大きいものか

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子供のお前にはすぐには分からないかもしれないが…と前置きをして親父は言った 「相手と仲良くなりたいと思うなら、まず自分から近づいていけ。」 『だって…』と言った後、ハッとしてまた俺は縮こまる。言い訳は止めろ、当時の俺。 「人が人を気に入る理由は色々ある。外見や人柄、出来事、様々だ。 仲良くなる理由だっておんなじだ。相手を気に入ったからもっと親しくなりたい、そうやってお互いに近づいて初めて親しくなれるんだ。 今のお前の考えだと、『仲良くなってもらいたけりゃ、そっちから来い』そう言ってるのと変わらないぞ? お前は『気に入ってやるから、自分に気に入られろ』って言ってくるやつを気に入れるか?仲良くなれるか?」 よく噛まないなと思うくらい、こういう時の親父はスラスラと話す。怒るより叱るより諭すように話す親父にいつも俺はやりこめられてしまう。納得させられるのがまた質が悪い。 「…そんな奴、とは、仲良くなれない…」 そして、やりこめられるといつも俯いてボソボソと非を認めるそんな俺を、親父もまたいつものように頭をポンポンと叩きながらいつもの台詞を言うんだ。
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