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「《月の巫女》が歌うことによって聖剣は真の力を発揮する。魔王を退けるには私の力が必要なの」 「その歌を歌い終えると、《月の巫女》は命を落とす。そうも聞きました」 「うん」 「怖くないんですか?」 「えっ?」 「死んじゃうんですよ?どうして、それでも……行くって決意ができるんですか?」 うつむいたまま、考える彼女の表情は見えない。 「誰かのためだから。何よりも君のためだから。勝手に決めちゃってごめんなさい。でも、私は行く」 振り返った彼女の目に光る強い決意。彼女の意志を翻すことなどできないだろう。 僕は力強い眼差しに耐えられず、目線を落とした。 無力だ。旅に同行することさえかなわないとは。 「これ、受け取って」 そう言って彼女は、小さな紙を一枚、取り出した。 手のひらほどの大きさで、魔方陣と呼ばれる、魔法を発動するための引き金とも言える図式が描かれていた。 「賢者様が、大切な人に渡しなさいって」 そう言うと彼女は一歩後ろに下がり、うつむいてしまった。 先ほどの力強い姿とはうってかわり、年相応の女の子の姿だった。
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