6人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん、ありがとう」
そう答えるのが精一杯だった。
彼女の振る舞いはまさに改心の一撃。
それからというもの、僕は変わった。旅立つ彼女の背中を忘れないため、必死に努力した。
気持ちだけでも隣に並んでいたい。そう思い、教会の仕事を手伝い、彼女の代わりを務めた。
ある日の昼下がりのこと、僕は彼女からもらった紙の魔方陣を眺めていた。
そこには僕と彼女の名前が合って、少し嬉しく、切ない。
仕事に戻ろうと思い立ち上がりかけた時、突然魔方陣が光り始めた。
そして紙は激しく燃え上がり、あたりに煙が立ち込める。
あわててドアを開けて煙を外に追い出し、部屋の中に目を戻すと、そこには彼女が立っていた。
「ここは?」
お互いに茫然としていたが、先に回復したのは僕だった。
涙をこらえて笑顔を浮かべてみせた。
「おかえりなさい」
最初のコメントを投稿しよう!