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なんとか話の取っ掛かりを掴みたい。このまま戻るのは切ないし、明日には国に帰らないといけないんだ。最後になにか……。
「ねぇ、さっき儚げって言ったよね?」
僕が悩んでいると、彼女から話してくれた。
「うん。どうかした?」
「西から留学生が来るっていうから、あなたの国のことを少し調べてみたの。『ロウソクの火は消える瞬間、強く燃える』ってことわざがあるんでしょ?」
「そうだよ」
彼女が僕の国について調べてくれたのは嬉しいけど、急にどうしたんだろう?
まぶたを閉じて、彼女は言った。
「私、思ったの。まるで桜みたい、って。散り際に美しく咲き誇る桜の姿が自然と思い浮かんできて……」
再び目を開き、僕のほうに顔を向けて、小さく微笑む。
「でも、あなたの国に桜は無いのよね。てっきり、どこにでもあると思ってたから、紹介するのが最後になっちゃった」
最後、という言葉が切なかった。彼女の笑顔が切なかった。
「あのさ、魔法学校って知ってる?国外からも学生を受け入れているんだけれど、僕はそこを目指しているんだ」
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