3. 嵐のような夜

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「有田さん、休日はどんなことしてるんですか~?」 「…特に決まってないけど。」 「例えばですよー。映画見てるとか~、ドライブとか~。」 「どっちもするよ。一日中、本読んでる時もあるけど。」 …ドライブ、するんだ。 どちらかといえばインドア派なイメージだったけど。 私の斜め前で話してるからつい聞いてしまう。 「じゃあ、ドライブとかって、お一人様ですか~?それとも彼女さん連れてですか~?」 飲んでたビールをブッと吹きそうになるのを、なんとか堪えた。 なんてこと聞くの、サエちゃん!! ちょうど、手品についての議論も終わったのか、近くに座っていた何人かもその会話が聞こえたんだろう、参加し始めた。 「おー、面白い話してんじゃん! どうなんだよー?」 昂くんの肩を掴みグイグイ動かす先輩、佐々木さん。 グイグイ肩を揺らされて、 さすがにちょっとげんなりした様子の昂くん。 少し面倒くさそうに、 「どっちもですよ…。」 と、質問をしたサエちゃんにというより、しつこい佐々木さんに答える。 「あ、そーなの?彼女いるんだな、やっぱり!」 「え~、やっぱりいるんですかぁ?ざんねーん!!社内の女子に報告だな~。」 そりゃいるよな、と納得した様子の佐々木さんに比べ、 首を横に振って、あ~あ、と心底無念がるサエちゃん。 そこへ高梨がひょい、と現れ、 「あらー、女泣かせですね、有田さん!」 軽口をたたく。 「…高梨ほどじゃないよ。」 にっこり笑って答える。 その何故だか微妙なやりとりを、 私は近くで見てるはずなのに、遠くで見てるような感覚で、 ボンヤリと宙を見つめていた。 …カノジョガ イル。 その言葉だけが、私の胸の中に影を落としていた。 そりゃ、いい歳なんだから。 彼女くらい、いるよね。 もしかしたら、結婚だって考えてるよね。 当たり前のことだ。 なのに、なんで。 こんなに今更、胸が痛むんだろう?
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