8. 思い出の場所

17/18
1963人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
「…分かるよ。私も昂くんと再会してから、似たような想いしてたから。」 昔の気持ちに引き戻されて、 何度も泣いた…。 「神戸で飲んだ夜、ひかり…泣いた?」 ビクッと肩が震えてしまった。 これじゃあ、泣きましたって白状したようなものだ。 伺うように昂くんを見ると、哀し気な瞳で私を見つめていた。 「俺のせい、だよな。ごめん。」 眼鏡を指で押し上げて直しながら謝る。 「俺、もう過去を振り返るのはやめるから。ひかりも、昔の俺は見るな。」 何か決意したような、ハッキリした言い方に、戸惑ってしまう。 もう、忘れようってこと? お互い。 「俺は、今のひかりを知りたいし、今の俺をお前にも見て欲しい。」 ……え…? 昂くんの思いがけない言葉に、 俯いていた顔をパッと上げる。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!