8. 思い出の場所

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「なんて顔してるんだよ。」 昂くんはニヤリと口角を上げて、また料理に手をつけ始めた。 「…だって。もう、忘れようって言われたのかと思ったから…ビックリして。」 笑ってるところを見ると、相当変な顔をしてたのもしれない。 口がポカンと開いていたのは間違いない。 「バーカ。早とちりだな。俺は、過去は過去として受け止めて、ちゃんと前に進もうって言ってんの。」 バーカって。 そうだった。 昂くんは紳士的に見えて、本当は口が悪い。 仲が良ければ尚更。 「ふふっ、そっか。…昂くんはやっぱり大人だね。私なんかグダグダ悩んでばっかりで、結論も出なくてさ。」 「俺だってそうだよ。結論だって出たようで出てないし。」 「そう…なの?」 首を傾げると、 「そうだよ。お前との未来が、あるのかないのか、とか?」 ボソっと言うのが聞こえて、 心臓が、跳ねた。 「…もう!ホント昂くんて。」 「何?」 目を丸くしながら聞いてくるけど、確信犯じゃないのかな。 「…何でもない!」 さりげなく、人のココロを撃ち落とすようなことを言ってのけるから。 ドキドキが止まらなくなる。 でもそんなこと思ってるのは、 彼には言わない。 私ばっかり動揺してるみたいで、悔しいから…。 これからの私達が、どんな道を選ぶかは分からないけど。 今のお互いと、向き合おう。 それだけは決めた。
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