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「え~?そんなことないと思いますがー?」
記憶を遡って見ても、後輩から告られたなんて1人位じゃなかったかな。
「キミが知らないだけ。俺結構、牽制してたの、気づかなかった?」
…え。そんなこと、してた、の?
「…気づかなかった、です。」
驚きのあまり、口をポカン、と開けて見つめてしまう。
「やっぱりな。桃瀬は自分のことには鈍いから。」
私の頭をクシャクシャっと大きな手で撫で回して、
そのままコツン、と小突かれる。
ムーっと、昂くんを軽く睨みつけると、
「…何か、懐かしいな…。」
ボソッと、少し照れたように呟いて、私を優しく見つめてくる。
が、すぐ目線を逸らし、歓迎会をしている元の個室へと足を向けた。
私は、それを追った。
…懐かしい、かぁ。
確かに、私達2人を囲む空気だけは、10年前のまま。
タイムスリップでもしたかのように、あの頃の気持ちまで、ちょっとずつ蘇ってきてしまう。
参る、なぁ…。
はぁ、と再びため息をつきながら、元の席につく。
高梨の手品は終わってしまっていたけど、好評だったようで、タネについて議論が交わされていた。
その傍らで、
先程、昂くんのメガネがイイ!!
と褒めちぎっていた後輩のサエちゃんが、
昂くんの隣に座って距離を詰め、プライベート情報を更に聞き出そうとしているのが耳に入ってきた。
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