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当たっただけだと思ったそれは、意志を持って確かに動いて。
そっと指と指が触れ合う。
ちらりと横を見ると、俺とは逆の壁を見つめる先輩が居た。
誰もいない男湯。
湯船に沈められた手と手は、しっかりと触れ合っていて、絡み合う指から気持ちが伝わる。
すっげぇ、好きだ。
「…先輩」
小さく呼べば、振り向いてくれる愛しい人。
少し照れたようなその顔がキレイで、繋いだ手に力を込めた。
自然と、引き寄せられるように顔が近づく。
一瞬、掠めただけの唇。
間近で視線を絡み合わせて、笑う。
「帰ろうか」
艶っぽい声で先輩が囁くから。
俺は湯船から上がれなくなった。
銭湯は危険だ。
いろいろな意味で。
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