3月7日 宮下

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当たっただけだと思ったそれは、意志を持って確かに動いて。 そっと指と指が触れ合う。 ちらりと横を見ると、俺とは逆の壁を見つめる先輩が居た。 誰もいない男湯。 湯船に沈められた手と手は、しっかりと触れ合っていて、絡み合う指から気持ちが伝わる。 すっげぇ、好きだ。 「…先輩」 小さく呼べば、振り向いてくれる愛しい人。 少し照れたようなその顔がキレイで、繋いだ手に力を込めた。 自然と、引き寄せられるように顔が近づく。 一瞬、掠めただけの唇。 間近で視線を絡み合わせて、笑う。 「帰ろうか」 艶っぽい声で先輩が囁くから。 俺は湯船から上がれなくなった。 銭湯は危険だ。 いろいろな意味で。
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