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わたしはパンフレットを閉じ、神谷さんがいるキッチンに向かう。
芳ばしい香りが立ち込めるキッチンに、普段着の神谷さんが立っている。
知らないでしょう?
ただ、それだけで、どうしようもなく幸せを感じてしまうこと。
一緒に暮らし始めて数ヶ月が経つというのに。
わたしは未だに、神谷さんの声に、仕草にドキドキしている。
「神谷さん」
呼び掛ければ、わたしの声に顔だけを向ける神谷さん。
機嫌直して?
甘えるようにギュッとしがみつくと、神谷さんは驚いたようにビクリと肩を揺らした。
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