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心和ぐ時をうち壊すように、向こうから慌ただしく何人かの足音が聞こえてくる。
「親王様!親王様!いずこにおいでで御座いますか?親王様ぁぁ~!」
声はこちらへと近付き、しばらく近くで呼び回ったが、やがてまた遠くへ移動していった。
「ふう…やっと行った。ホントしつこい。ちっとも楽しめねえじゃねえか」
几帳の後ろで若い男性と、手で口を塞いだはだけた単姿の少年達が隠れていた。
「あのう親王様、皆…噂しておりました。親王様がその…」
「姫宮の話か?」
「は、はい…」
少年達は皆“親王”と呼んだ若い男性の目を見た。
直衣姿の親王は脇息に寄りかかりくつろいだ格好で扇を扇ぎ、焚き付けた高価で品のある香の薫りが周囲に漂った。
端正な顔立ちと立ち昇る気品に、目にした誰もが思わず釘付けになる。
「帝から言われた…けど気は進まねえよ。先の帝の娘らしいけど誰だろうと関係ねえ…」
親王はパチンと扇を閉じる。
「俺はおまえらと、この様に楽しんでる方がずっといいわ」
「親王様ぁ…僕も親王様とずっといたいです」
「僕も…」
「ずるい!僕も一緒いたいです!」
五人の少年達は目を輝かせ親王にさらに近寄った。
「親王様ぁ…今宵は誰を選んでくださいますか?」
少年の一人が小首を傾げ親王に訊ねた。
「僕、一生懸命絶対頑張ります」
「抜け駆けはしない約束だろ!」
「抜け駆けじゃないよ!」
「僕だって精一杯ご奉仕しますぅ」
少年達は膝でじりじりと前に進み、互いに肩で押し合いながら睨みあった。
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