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当たり前だけどさ、逸樹姉さんは居合で人を殺したことはない。居合抜きと呼ばれる野菜を斬ったりする芸ならたまにするけれど、人を斬ったら今頃刑務所の中だろう。
いや、この町の警察はしょぼいから大丈夫かもしれない。一応警察はいるけれど、たまにしかパトロールをしていないようだし…
それはそうと着替え終わった。いや、着替え終わってしまったと言うべきか。正直、かなり怖い。チラッと逸樹姉さんの方を見てみる。
目を閉じてじっとしている。どうやら精神統一をしているようだ。精神統一なんてしたことがないから本当に精神統一かは分からないけれど…
もしかしたら眠っているだけかもしれない。
「…」
どうしようかな。話しかけたら驚いて斬りかかってくるかもしれない。だからといって、このままだと時間がもったいないか。
そっと肩に触れてみよう。うん、それが良い。
ゆっくりと近づき、肩に手を伸ばす。
「何をしているんだ?少年」
「起きてましたか」
僕が肩に触れる直前に逸樹姉さんは目を開く。どうやら眠っていたわけではないようだ。
「言われてみれば眠たい気もするが、二度寝するつもりはないさ。そんなことよりも始めようか」
逸樹姉さんが刀の柄を掴む。
心の準備ができていなかったけれど、逸樹姉さんはそんなことは全く気にせずに僕を斬った。
一瞬のことで抵抗する暇もなかった。
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