召喚

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 そして、ある満月が綺麗な晩、Y氏はついに、魔法陣を完成させることができた。完成した魔法陣からは、異様な雰囲気が漂っていたが、彼は気にすることなく、陣の中央に供物を捧げる。それから、陣の外に出ると蝋燭に火を点し、虚ろな目で呪文を唱え始めた。どこの国の言語なのか、そもそも言葉であるかさえ分からない不気味な呪文をだ。それは、悪魔を召喚する呪文だ。  呪文が唱え終わると同時に、魔法陣が光り出し、ついに悪魔が現れた。黒いからだに尖った耳、つり上がった口は、まさに悪魔と呼ばれるのに相応しい外観であった。  召喚された悪魔は人間の世界に現れて、初めて高笑いをした。 「イシシシ!うまくいった!長いこと、人間に封印されていたせいで思った通りに力を発揮できないでいたが、上手いこと、私を召喚できる人間に巡り会えた!あとは、本を通じて、この男を操り、私を再び、この世の中に呼び出させるだけ!」  作戦がうまくいった悪魔は満足そうに笑っている。 「さぁ、さっそく、この世の中に、災いをもたらそうではないか!」  悪魔の身体が紫色の煙となり、部屋から消え去った。  悪魔が去り、正気に戻ったY氏は今までの事を思い出し、ひどく後悔した。悪魔に操られていたとはいえ、この世に災いをもたらす存在を呼び出してしまった。今更、謝ったところで解決する問題ではない。それ以前に、誰に謝ればいいというのだろうか。
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