11人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「違いますよ。あなたが泉に落ちたから私が現れたのです」
「泉っていうか…噴水なんですけど」
「さあ、それでは…」
オレの話は無視かよ。女神様が両手を目の前に差し出した。
「何ですか、それ」
その手の上にはそれぞれ丸い何かが乗っていた。
右手のそれは白っぽい光を放っている。
左手のそれは黒っぽい光を放っている。
「あなたが落としたのは、天使の心ですか?」
女神様は右手を軽くあげる。
「それとも悪魔の心ですか?」
今度は左手をあげた。
…え?
「いや、どっちも落としてません」
とっさに答えていたが、この展開、何か覚えがある。女神様はまたニコリと笑った。
「あなたは正直者ですね」
そうだ!昔読んだ童話にこんな話があったな。木こりが斧を落として…っていう話だ。
「ご褒美に両方の心をあげましょう」
「いや、元のままで…」
オレが言い終わる前に視界がぼやけてきて女神様が遠ざかって行く…
最初のコメントを投稿しよう!