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いつもなら多分、僕はまだ寝ている時間だった。
だけどあの女のせいで目がしっかりと覚めてしまう。
考えてみれば一君の部屋って僕の隣だから、必然的にあの女と関わるじゃん。
気づいてしまった現実に落ち込む。
とりあえず顔を洗おうと思い、僕は井戸へ向かった。
「一様、こちら手ぬぐいです」
「ありがとう。橘、お前も顔を洗うといい」
井戸には女と一君がいた。一君が女を呼んでいたので、僕は初めて名前を知る。
こいつ、橘っていうんだ。
橘は井戸の使い方がわからないのか、首を傾げている。
「邪魔。一君、おはよう」
「ちっ。沖田……さんか」
橘は舌打ちをして僕を睨む。
確実に今、僕のことを呼び捨てにしようとしたよね?
一君に使い方を教えてもらって、井戸水をたらいに移す。
橘が顔を洗い終えると、今度は一君が手ぬぐいを差し出す。
「ありがとうございます!」
ニコッと笑って、一君にお礼を言う。
二人はそのまま部屋の方に戻って行った。
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