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駅から続く高架の下をくぐり、大きな左カーブのあとしばらくは、住宅や点在する店舗に挟まれた、上り下りの坂道が続く。
200メートルほど進んだところにある大きな薬局を越えると、番地は『風原』から『すぎなが丘』へと変わる。
石窯焼きで人気のパン屋の前を過ぎ、赤い看板のファッションセンターを通過する。
ふたつめの大きな坂を越えた先の信号で右に折れ、古い商店街をしばらく進むと、両側を上り坂に挟まれた十字路にやって来る。
ここを左折すると、辺りの様子が一変する。
辺りは広い空き地が目立つようになり、緩やかな丘を彩るように、一面たんぽぽの花が咲き乱れる。
それが、この一帯が『たんぽぽが丘』と呼ばれる由来であることは、言うまでもない。
小学校近くの停留所でバスを降りると、優海はもと来た道を引き返すように歩を進める。すぐ目と鼻の先にあるホームセンターのすぐ脇を曲がり、少し行くと、右手に小さな公園が見えた。
もう少し。ここを抜けたら。
優海の歩調が早まる。公園を斜めに突っ切り、裏手の出入り口から細い小路を進んでゆくと、目の前に広々とした庭園が姿をあらわした。
白いペンキで塗られた木の門をくぐると、スイートロケットやカモミール、キャットミントなど、色とりどりの春のハーブたちが優海を出迎える。
幾つもの石を綺麗に並べて作られた歩道を道なり
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