10人が本棚に入れています
本棚に追加
に進むと、避暑地にあるペンションのような外観の、2階建てのおしゃれな建物に行き着く。
玄関先の看板には『たんぽぽが丘ハーブ協会』と書かれている。
木の扉をノックして、優海は元気よく中に呼びかけた。
「こんにちは~、亜美さんっ。」
けれども、どこからも返事がない。
「あぁみさぁぁぁん、こんにちはぁぁぁ!」
優海は声を張りあげてもう一度呼びかけたが、やはり返事がない。
変だなあ。立て札も『open』になってるし、鍵も開いてるのに……。
そのとき、優海の頭の中にいやな考えがよぎった。
もしかして亜美さん、強盗かなにかに入られて、身動きできないようにされてるんじゃ……。
どこにでも想像力のたくましい子はいるが、優海もそんな子のひとりだった。
かばんから、音楽用のリコーダーを取り出して右手にきっと握ると、優海はおそるおそる、ドアノブに手をかける。そしてゆっくりと扉を開け、その場から中をのぞき込んだ。
白い壁紙と、みがかれたフローリングの床で統一された建物の内側は、いつ見てもほんとうにきれいだ。
玄関の正面には受付があり、すぐそばに観葉植物の鉢植えが置かれている。
受付から右手は、窓がひとつの小部屋のようになっていて、ハーブや野草の本がずらりと納められた本棚、そして、草花の標本がはさまれたファイルが飾られた机が置いてある。
最初のコメントを投稿しよう!