協会からの手紙

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       1 <真殿優海  右記の者を協会修練士に認定する たんぽぽが丘魔法士協会>  証書を何度も何度も読みかえす。  夢じゃない。  そこに書かれているのは、まぎれもなく自分の名前だ。 「……やっと。」  しばらくその小さな肩をふるわせていた優海は、たまりかねたように歓喜の声をあげた。 「やったぁーっ!!これで私も魔法使いになれるんだぁーっ!!」  それはつい先程のこと。  この春中学に入学したばかりの真殿優海は、セットした目覚まし時計より一時間早くベッドからとび起きて、玄関先で郵便が届くのをいまかいまかと待っていた。  時刻は午前5時40分。  ふつう、こんな時間に郵便局のバイクはやってこない。もちろん優海もそんなことは知っている。  優海が待っていたのは『ふつうとは違う』郵便だった。  20分。30分。  まだ少し肌寒い朝の空気に身をこわばらせながら、優海は日が登りはじめた空を見上げる。  すると、南の空からこちらに向かって来るひとつの小さな影が見えた。  鳩だ。  優海は白い息をはきながら目を輝かせる。連絡があった日からずっと待ちわびていた、協会の伝書鳩がようやくやってきたのだ。 「お疲れ様、ありがと。」  優海は鳩の頭を優しくなでると、くくりつけられていた手紙をはずす。
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