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目の前で、亜美さんがみるみるうちに壁の光の中に消えていくのだ。
何が起こったのか理解できなくて、その場に固まっている優海に、亜美さんは光の中から顔だけ出して呼びかける。
「どうしたの?大丈夫だからいらっしゃい。」
促されて、優海はおそるおそる光に片手を差し出してみた。
すると手はするすると奥までもぐってゆく。さっきまでそこに壁があったことが嘘のようだ。
一回だけゆっくり深呼吸すると、優海は思いきって光の中に飛び込んだ。
「さあ、こっちよ。」
亜美さんの案内で、優海は光の中を歩いてゆく。まわりはただただ一面真っ白で、どこまでが道でどこからが壁かもわからない。
けれど、亜美さんの体が一歩ごとに少しずつ下に下がってゆくようすから、なんとなく自分がゆるやかな階段を降りていることはわかった。
「さあ、着いたわ。どうぞ。」
亜美さんは立ち止まると、優海に道をゆずるようにして体を横にそらす。
言われるままに前に進むと、突然強い光が優海を包みこんだ。
あまりのまぶしさに、とっさに目をつぶる優海。しばらくして、ゆっくりと目を開けると、そこにはまるでヨーロッパのお屋敷の中のような、おしゃれで趣きのある部屋が広がっていた。
「うわぁ……すごーい。」
思わずため息をもらす優海の後ろから、亜美さんがにこにこしながらやって来た。
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