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「ねぇいいでしょ?ちゃんと自分で世話するからぁっ。」
「だから、ダメだっていってるでしょ。聞き分けのないこと言うんじゃないの!」
「お願いっ!犬でも猫でもいいの。買ってくれたら、来月と再来月のおこづかいいらないからぁっ!!」
夜。
優海の家では、服の裾をつかんで必死に食いさがる優海と、けんめいにそれを引きはがそうとするお母さんのバトルが始まって、いよいよ30分が経とうとしていた。
どうしてこんなことになっているのか。皆さんに説明するには、2時間ほど前までさかのぼらなければならない。
「すごーい、いつもの協会の下に、こんな広い地下室があるなんて、私ぜんぜん知らなかった!」
いかにも子供らしい素直な反応に、亜美さんは苦笑いして答える。
「ごめんね。一般の人にはここの存在を公表できないきまりになっているから、いままで黙っていたの。」
「でも、ぜんぜん地下室って感じがしないね。開放的だし、空気だって、もしかしたら外よりきれいなんじゃないかな?」
「外からじゃわからないけど、ちゃんと庭園から新鮮な空気が入るようになっているの。あとは、この子のおかげかな。」
そう言って亜美さんは、すぐそばの机に視線をむけた。
いかにも高級そうなその机の上には、青白い陶器の鉢が飾ってある。その中で一株の小さな木が、ふたつみっつの可愛らしい花を咲かせていた。
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