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の前にあらわれた人形をまじまじと見つめる。
かんたんに例えると、それはまるで手足のはえた『てるてる坊主』だった。
大きさは20~25センチくらい。体の大きさにくらべてずいぶん大きなその頭には、花のおしべのような触角が2本生えていて、ふっくらしたほっぺたは触ると気持ちよさそうだ。
緑の帽子と白っぽいフリフリのワンピースは、ちょうど何かの花を逆さにしたような形をしていて、くりくりとした大きな目は、まるで子犬や子猫みたいに透き通ったまなざしをこちらに向けていた。
「はじめまして、優海ちゃん。」
優海の目が点になった。
しゃべった。
人形がしゃべった。
しかも自分の名前を呼んだ。
優海はもう、何がなんだかわからなくて、その場で固まってしまった。
そんな優海にはおかまいなしに、どう見ても人形にしか見えないそれは、ぺらぺらと自己紹介をはじめた。
「亜美のパートナーのユキですっ。おひさまと春風が大好きな、かわいいツツジなのですっ。」
え、パートナー?ツツジ?何それ、何それぇぇ。
優海はますますわけがわからなくなって、いまにも頭がパンクしそうだった。
「えぅえぅえぅ……。」
優海のようすを見かねて、今度は亜美さんが説明する。
「びっくりさせちゃったかな?いま本人が言ってたように、この子は正真正銘、本物のツツジの化身
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