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になるということは、忘れないで。」
穏やかな表情から一変、真剣な顔つきで話す亜美さんに、優海も黙ってうなづく。それを見て、亜美さんはまた、優しい笑顔をなげかけた。
「だから、一度決めたパートナーには、感謝と思いやりの気持ちをいつまでも持ち続けてほしいの。優海ちゃんなら、できるわよね?」
「……うん。」
優海はいつもよりずっとおとなしく、けれど力強く答えた。
「よろしい。」
言いながら、ちょっとわざとらしく偉ぶってみせると、亜美さんは机の引きだしからなにかを取り出した。
「じゃあ、これを持っていって。」
優海は受け取ったものを確認する。それはうすべに色の革のポーチで、中には筒状に巻かれた紙のようなものがひとつと
、かわいらしいピンクの万年筆が入っていた。
「……亜美さん、これは?」
「その筒は、パートナーとの契約書よ。そこに、自分の名前とパートナーの呼び名を書いて、最後に自分の血判と、パートナーにしたいものの血や樹液なんかを、それぞれの名前の横に押しこむの。それで契約成立ね。」
「ふーん……。でもケッパンってなに?」
優海のたわいない質問に、亜美さんはにっこり笑ったまま答えた。
「血判っていうのは、血のハンコみたいなものかな。」
「え……血?」
「そう。自分の指を傷つけて、そこから出てきた血を押し付けるの。」
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