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指を傷つけて血を出すと聞いて、優海はちょっと腰がひけた。昔から、予防注射とか消毒薬とか、痛いのは大の苦手なのだ。
そんな優海の顔色を察してか、亜美さんがさとすように続ける。
「昔の人は、決して約束をやぶらないという証しとして、誓約書に押したりしていたの。
時代おくれのような気がするかもしれないけど、魔法は血の力が重要になるから、こればっかりはしかたがないわね。
あまり痛くない針も一緒に入っているから、そんなに怖がらなくても大丈夫。」
「う、うん。」
大丈夫って……。
優海はしぶしぶうなづいてはみたものの、やっぱり、針でわざと指を刺すのだけはちょっと怖かった。
修練士についてひととおり話を聞き終わり、地上まで戻ってきたときには、外はすっかり日がくれていた。
「もう暗くなっちゃったから、きょうはお家まで送っていくね。」
そう言って、亜美さんは優海を車で送ってくれた。
途中、流れてゆく街の灯りをぼんやりと眺めている助手席の優海に、亜美さんは前を向いたまま、いつものように穏やかな笑顔で言った。
「いろいろ駆け足で説明しちゃったけれど、優海ちゃんの場合、まずはパートナーさがしが最初の仕事かな。」
そうだった。まずはパートナーがいなければ、何もはじまらない。
とはいっても、生涯のパートナーになる相手なんて、そう簡単に
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