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協会から手紙が届いて、はやくも5日が経った。
お母さんの断固たる反対と『今後一年おこづかいなし攻撃』によって、お店でペットを買うのをなくなくあきらめた優海は、ご近所や学校のあちこちで、ペットの赤ちゃんがいたら引き取りたいとふれ回った。
けれども、ペットたちはそう都合よく赤ちゃんを産んではくれなかったし、せっかく知らせを聞いて飛んでいってみても、カブトムシの幼虫だとかオタマジャクシだとか、本人が期待するものとはおよそちがう結果ばかりだった。
「はぁぁ……。」
「大丈夫、優海ちゃん?最近元気ないけど……。」
中庭の芝生に広げたお弁当を前にしてため息をつく優海を心配して、向かいに座っている小梅が声をかける。
「うん、大丈夫。ちょっとくたびれてるだけだから。」
「……修練士の修行って、そんなに大変なの?」
声をひそめながらたずねる小梅に、優海は苦笑いして答えた。
「うん……なかなか見つからないんだぁ、可愛い赤ちゃん。」
赤ちゃん?……まさか!
小梅は小さい頃に絵本で読んだ『魔女』のことを思い出していた。魔女は若さと魔力を保つために、産まれたばかりの赤ちゃんをさらってきて、煮込んで食べてしまうのだ。
小梅の顔がだんだんと青ざめる。
まさかあの話は本当で、優海ちゃんは魔法の力を手に入れるために、赤ちゃんをさらって食べようとしているんじゃ……。
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