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宛先は自分宛て。差出人は
<たんぽぽが丘ハーブ協会>
と記されている。
まちがいなかった。
郵便を渡してまた戻ってゆく伝書鳩を手をふって見送ると、優海はふたたび家の中に入った。
「おはよう。」
扉を閉めると、突然声がかかった。お母さんが起きていたのだ。
「あっ、おはよう。ホラお母さん、コレっ!」
さっきやって来た手紙を見せながら、興奮ぎみに話す優海に、お母さんは小声で言った。
「お父さんまだ寝てるから、静かにね。」
優海のお父さんは、片道2時間かかる都内の会社に勤めていて、いつも朝早くから夜遅くまで、くたくたになるまで働いている。
そのため、休みの日は、よほどのことがない限りは9時過ぎまで起きない。
きょうは月曜日だったが、きのうは休日出勤したために代休になったらしい。
「……はーい。」
優海はちょっとつまらなそうに返事をすると、お父さんが寝ている一階を、できるだけ音をたてないように通り抜けて、2階の自分の部屋に戻った。
ベッドに対して真横に位置する出窓のカーテンを開けると、だいぶ高く昇ってきた日の光が部屋中に飛び込んでくる。
優海は机の上に散らばっている本やノートをどかすと、期待に胸ふくらませながら、手紙の封を開けた。中には便せん二枚の挨拶状と、はがき大の白い厚紙が入っていた。
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