協会からの手紙

7/10
前へ
/71ページ
次へ
       2 あれから2時間後。 「いってきまーす。」 「ちょっと優海、ハンカチハンカチ!」  学校の制服に着替え、いきおいよく飛び出してゆく優海を、お母さんが呼び止めた。 「あっ、忘れてた。」  すでに玄関から2~3メートル先に駆けだしていた優海は、頭をかくしぐさをして戻ってくる。 「……もう、そそっかしいんだから。」  そう言って、お母さんは笑いながらハンカチを手渡す。 「だってきょうは嬉しくって~。」  へらへらと笑って答える優海を、お母さんはこまり顔でたしなめる。 「気持ちはわかるけど、あんまりうかれてると危ないから、気を付けるのよ?」 「は~い。」 「きょうは協会へ寄ってくるんでしょ?亜美さんによろしくね。」 「うん!じゃあ、いってきまーす。」  言うなり優海はふたたび駆けだした。 「……やれやれねぇ。」  お母さんは小さくため息をつきながらも、遠ざかってゆく優海の背中を笑顔で見送った。  優海が通う風原市立第一中学校は、家が建っている北東部の高台から1Kmほどはなれた、市の中心部にほど近い場所にあった。  ま新しい家が建ちならぶ住宅街を抜けて坂道を下ってゆくと、車の往来がさかんな通りにぶつかる。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加