協会からの手紙

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 そのまま通りを横切って児童公園の脇を通りすぎ、しばらく歩くと、交差点にさしかかる。  この辺りまで来ると、同じ制服の生徒たちをちらほらと見かけるようになってくる。  優海は信号を渡り、すぐ左へ曲がる。するとすこし先に社宅用マンションが立ち並ぶ上り坂が現れた。  誰がよびはじめたかはわからないが、生徒たちの間で『心臓やぶりの坂』とよばれている急坂だ。  いつもなら、登校の度に登らなければならないこの坂を苦々しく思う優海だったが、きょうは少しも苦に感じない。  優海の頭の中は、すでに半分以上、放課後にタイムスリップしていた。 鼻唄まじりに坂を登っていると、ふいに後ろから声をかけられた。 「ゆ~みちゃんっ!」 優海が振り返ると、そこにはくりくりとした眼が可愛らしい、おかっぱ頭の小柄な少女が立っていた。  幼稚園のときからの親友、玉木小梅だ。 「あ、おはよっ、小梅ちゃん。」 「何かいいことでもあったの?」 「うんっ、今朝ね……。」  優海は坂道を登りながら、今朝届いた協会からの手紙のことを話した。  それを聞いた小梅もまた、そのまん丸な瞳を輝かせる。 「わぁ、やったね優海ちゃん! いいなあ、早く私にも来ないかなあ。」 image=472029212.jpg
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