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「小梅ちゃんは6月だから、あとひと月ちょっとだねっ。」
二人は幼い頃から、優海のおばあちゃんによく魔法使いの物語を話して聞かされていた。
この街には古くから魔法使いたちが住んでいて、一生懸命に何かをしようとしている頑張りやさんを、こっそりと助けてくれているのだと。
普通なら子供だましと言われてしまいそうな話だが、優海も小梅も、その話を信じていた。なぜなら、おばあちゃんこそがその魔法使いのひとりだったからだ。
「……私、絶対に強くて優しい、カッコいい魔法使いになるんだ。おばあちゃんみたいに。」
それが優海の目標だった。
前を見つめてつぶやくように、けれどはっきりと言う優海に、小梅はにっこり笑って応えた。
「うん! なれるよきっと。」
笑顔の小梅に、優海も笑顔で返す。
「きょうは学校終わったら協会に行くんだけど、小梅ちゃんどうする?」
「うーん。残念だけど、きょうは真っ直ぐ帰るって言っちゃったから。」
小梅は申し訳なさそうな顔で答える。優海もちょっと残念だったが、無理じいをしても悪い。
「そっか……。わかった、じゃあまた今度ね?」
「ごめんねー。」
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