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この世界が滅びないために、過去の人間は力を持つものを巫女と山伏に分けた。
互いに認め合った実力者同士でなければ力を振るえないのは平和のためである。
それは建前だ、と教壇で巫女と山伏の始まりについて語る教師を眺めながら綾斗千織(あやと せんり)は結論づけた。
第一章
空気のきれいな田舎町、それだけが最大にして唯一のメリットであるこの町にある、造乃宮(つくるのみや)高校。
それが千織の通う高校であり、また全国から力をもつ人間の集まる特殊な高校であった。
「ちーちゃんちーちゃん!大変だよ!」
教室でいつものように文庫本をめくっていた千織の元に、友人である数原若野(かずはら わかの)が息をきらして走ってきた。
一体、なにをそんなに慌てているのやら、と他人事のように思いながら読書を一旦中断する。
「なに?」
「ちーちゃん数学追試だって!!」
「え」
ここの高校に通うのは、巫女や山伏が半数を占め、それ以外では将来は大臣か医者かとでも言われるような優秀な者ばかりだ。
故にテスト等、学力の水準はとても高い。
もっとも巫女や山伏は赤点さえとらなければよいという条件付きである。
「とりあえず先生が職員室来いって!」
「い、行ってくる…」
いや、たしかにこないだのテストすごく自信なかったけど、追試だなんて、とひとりごちて千織は職員室へ向かう。
巫女や山伏として入学していれば成績が悪くても呼び出されないなんて不公平だ。
若野が巫女であってもきちんと学業を修めていることはこの際無視する。
「はぁ…」
一体どんなお小言を言われるのやら、とげんなりして千織は職員室の扉を叩いた。
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