SANDAI 6

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方位磁石が逝かれた。 「どうしてもっと早く気付いてやれなかったんだ!友よ!」 樹々生い茂る湿地帯。巨大なジャングルの中で、俺の声が無惨に響く。 神に捧げるように、逝かれた方位磁石を掌に乗せて気分を盛り上げてから、 地磁気の影響だろう。ジャングルに入ってから十数分でイカれた役立たずをぽいっと捨てる。 そもそも当てになどしていなかった。 俺の叫びが通り抜けたジャングルに、静寂が訪れるかと思いきや、耳を澄ませば俺を狙う猛獣達の唸り声や樹々の息遣いなど、生命の存在が其処彼処に音を奏でる。 案外、静寂を作るのは難しい。 この世は自分独りではないのだから。 耳を澄ませば何かしら音はする。 要は、意識の持ち様か。 そんなこんなで自分の数倍はある大きなタイガーが一匹、先陣切って現れる。口角を上げた獰猛な表情で、口からヨダレを垂らしながら。 歩いて進むのは面倒だと思っていた。 非常食も欲しかったり。 「乗り物には調度いいかな」 猛獣と同様の獰猛な笑みを広げる。 さぁ、冒険の始まりだ。
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