SANDAI 7

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「どうなってんだ!何でビョウガがいない?」 男の怒鳴り声がホールいっぱいに響き渡った。 「煩いぞ、蟷螂(カマキリ)」 「確かにこの絵から鱗粉が出ているのにだ!貉藻(ムジナモ)はおかしいと思わないのか?」 真夜中の美術館。そこに奇妙な男が二人いる。 足元まで隠す外套を纏い、右眼に単眼鏡をかけた、いかにも西欧の伯爵のような装いをしているのに、その外套の隙間から虫捕り網と虫籠が覗いている。 彼らの前には、一枚の絵画があった。 葉の一切ない枯れ木並樹に、どんよりとした灰色の空。 寒々しいその絵画のタイトルは『四季』。 貉藻は唇に指を触れさせながら、ビョウガによる被害報告書を読み返した。 <居眠り、うたた寝、寝惚ける> そして顔をあげ、絵画を見据える。 「おかしいのは、それだけじゃない」 貉藻の発言に蟷螂は首を捻る。 「たとえば、お前はこの絵から何を感じる?」 「………淋しいとか、悲しいとか?」 「この絵を見て眠りたくなるか?」 「いや、ならねぇ」 蟷螂の素直な応えに、貉藻は満足気に頷く。
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