SANDAI 5

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『なら最初から用意しとけ』か? それとも『今そういうのいらない』と言うべきか? とりあえず『ありがとう、俺もだよ』とは、絶対に言わないからな。 そんな頬を染めて、期待を込めた瞳で見つめてきても、ゼッテー言わねぇかんな。 「もうっ!何か言ってよ!」 「うわっ…」 俺が黙り続けたせいで彼女はゴムベラを振りあげて、チョコが飛び散り俺のワイシャツを汚す。 ブレザーは脱いでいたおかげで被害を免れたが、白いワイシャツには茶色い点が3つ並んだ。 「おい!何すんだよ!」 俺が怒鳴ると、彼女はアワワと慌てたが、すぐにパッと笑顔を見せて、 「大丈夫、大丈夫!」 銀のボールを湯せんから外して抱えると、椅子に座ってた俺のすぐ前で膝をつく。そして指にチョコレートをつけ、 「こうすれば…、ほら!オリオン座!」 「ほら、じゃねぇ!」 服にチョコの点を足して星座を描いた彼女を、俺はつい、どづいてしまった。 それが運悪く銀のボールをひっくり返してしまい、彼女は頭からチョコを被ってしまう。
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