SANDAI 5

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「あっ…、わりぃ…」 俺はすぐに、しりもちをついている彼女の横に膝をつく。 「目とか、入ってねぇか?」 「うん、平気だよ。それより、私こそごめん」 彼女は瞳を伏せる。 「いや、俺の方が悪い」 しかし、彼女は首を横に振り、 「気づかなかった私が悪いわ。秀君も男の子だもんね」 ん? 「言わなくても、もう解るよ」 彼女は髪にベッタリとつくチョコをすくうと、胸や頬や唇に塗り始め、 「秀君、ハッピーバレンタイン。私を、め・し・あ・が・レ!」 「全力でお断り致します!」 「ああっ!待ってよ、秀君!」 俺は荷物を引っつかんで帰ろうとし、一度だけ彼女の方を振りかえる。 彼女はしりもちをついたままの状態で、捨てられた仔犬のような瞳でこちらを見つめていて、 「……とりあえず、オリオン座だけはもらっといてやるよ」 その言葉だけで彼女はパッと笑顔になって、 「また、明日ね!」 「ああ」 オリオン座は、 何だかしょっぱくて、 ケバケバしていた。
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