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「今日もいい天気だな。」
一人の男が大きく欠伸し、伸びをして、東の空から昇る光を見つめ、立ち尽くしていた。
ボサボサの頭に、無精髭。因れた着物から半身はだけ、豹豹とした風貌だ。
男は実に二十年の間、この朝の一言を忘れなかった。
地平の先から昇る太陽を見、冷たい風を吸い込む。それがこの男の日課だった。
「やはりここにいたか。」
振り返ると、彼より背の丈が一回り大きい男が、笑顔で手を上げた。
「おう甘言、お前も今日は早いじゃないか。」
腕を組む男の隣に立つ。
「お前と話したい事があって眼が覚めたのさ。」
手を眩しい陽にかざしながら、彼を見ていた。無精の男は眉を動かし笑う。
「何だ?」
少し視線を下げてしかし、意を決したように言う。
「…何故、あの時に郡界を断罪しなかったんだ?」
カカッと笑い、雲を見る。
「その事か。」
「理由ぐらい話せ。豪角将軍も納得しかねてる。」
眼を細めて、陽にまどろむ。
「大した事ではないだろ。」
平然とそう言うと、長身の男はその言葉に憤激した。
「…ヤツはお前を殺して、この国を盗ろうとしたのだぞ!!」
普段は穏やかな彼も、この時ばかりは、唾を飛ばして激した。
「今ヤツを斬らねば、必ず後悔するぞ!!新たな刺客が出るやもしれん…!!」
「その時はその時だろ。」
軽い調子で言った。
「…お前は自分の命を軽視しているのか!?」
肩を怒らせて怒鳴る。
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