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「なんで私が楽しみにして置いてあったたあんぱんを食べちゃったの!」
バン!と机に大きく手をつき叫ぶ目の前の黒髪ショートの小さな女の子。
その声は少し広めに作られているここ空き教室、現在俺たちが活用している部室に大きく響くぐらいだ。
「だから、すみませんって言ってるじゃないですか!今日弁当を忘れてしまってお腹が減ってたんですよ」
俺はさっきから同じことを言い続け頭を下げるが、目の前の女の子は一向に許してくれる気配がない。
「だからって、机に置いてある他人の食料を食べるなんて最低だよ!」
「ぐっ、正論だから何も言い返せない……」
「でしょ!でしょ!じゃ、そういうことであんぱん10個ね!後、一日遅れる度に100個、1000個と桁が上がっていきまーす!」
「一個食べただけで10倍返し!?しかも増え方が闇金融よりたちがわりぃ!」
あまりの理不尽な要求に俺は絶望する。
「はいはい、そこまでにしときましょう真子ちゃん。和志君も謝ってるんだし許してあげましょ?」
俺たちが再び口論を続けていると、教室の端の方に設置されているソファーで読書をしていた女の人がすっと立ち上がり、俺たちの口論を止めに入った。
その動作に合わせて、栗色の長い髪の毛が宙にふわっと舞い、俺はそれに少し見とれてしまう。
「止めないでよ千尋!これは私とたかみーとの戦争なんだから!」
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