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妹の私からすると、姉にこんな乙女チックな一面があったことが驚きだった。
いつも冷静で理知的だったしいちゃんにこんな情熱的な恋文が書けるとは・・・
「恋は盲目」とは昔からよく言ったもんだが、
あのしいちゃんをここまでの気持ちにさせるとは幸雄さんも隅に置けない男だ。
さすがにこれが幸雄さん以外に宛てたラブレターということはないだろう。
もしも違う男に宛てた手紙なら、こんな頼りない場所に挟んで持っておくのは大問題だし。
たぶん二人がまだ付き合う前に、しいちゃんが幸雄さんへの想いを綴ったメモなのだろうか。
筆者の心の乱れを反映しているような箇所もあるが、衝動的な想いの丈を紙面にぶつけた結果、
少しくらいカタチが崩れるようなことがあってもお構いなしといった勢いも感じられる。
幸雄さんはこのラブレターの存在を知らないんじゃないかな?
私はなんとなくそう直感して、むしろそのことを微笑ましく思った。
愛し合う二人の目には見えない強い結びつき。
おおいに第三者的な立場ながらも、それを密かに知ってしまった私は、
温かい眼差しで若い二人の行く末を見守っていこうではありませんか・・・
私は軽く若年寄りのような心境に浸りながら、ベッドの淵にもたれかかる。
真正面に見える備え付けのクローゼットの扉が少し開いており、
中から何やらぬいぐるみのようなものがこっちを覗いている気がしたが、
秘密の恋文を見つけて満足した私はそれ以上の詮索をする気分にはなれなかった。
案外、しいちゃんにも私と同じでおっちょこちょいな性質があるのかもなぁ~
そんなことを思いながら、私はなにげなく手に持ったラブレターを裏返してみた。
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