真実と戸惑い

2/4

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
・・・? ラブレターを裏返した私は思わず首をかしげていた。 一瞬、白紙のようにも見えたラブレターの裏面だったが、 よく見ると隅の方に小さな文字で日付けが打ってある。 なぜか最初に月を間違えて書いてしまったらしく、 4という数字に×がしてあり7と上書きされている。 その右横に斜め線が引いてあり、さらに右には25という数字が記してあった。 要するに、 「4/25から7/25へ」訂正したというわけだ。 秘密の恋文に日付けを記すというのがどれほど一般的な行為なのかは知らないが、 その日付けを間違ってしまうというのは、やはり少し間抜けな話ではある。 しかし、それよりも私の気を引いたのはその「7/25」という日付け、そのものだった。 すごく昔のことなので姉はもう忘れてしまっているだろうが、 日本のマイナーな記念日などの話を二人でしている時だかに、 こんな会話になったのを私は今でも覚えている。 「ほら、しーちゃん。  2月22日はニャンニャンニャンで猫の日。  8月31日はヤーサーイーで野菜の日だって!!」 私はちょっとした豆知識を集めた本の内容を姉にひけらかして遊んでいた。 「へー、そんなのがあるんだ、あ、じゃあ私も思いついちゃった。  725はナツコって読めるから、7月25日は奈津子の日だね!  ほら、なっちゃんの記念日だよ。よかったね~。」 姉がとっさに機転を利かせてそう返答したその出来事以来、 私の中で7月25日という日付は誕生日の次くらいに特別なものとなっていた。 その特別な日付が奇しくも姉の情熱的なラブレターに記されている・・・ 思いがけない場所で急に自分の名前が呼ばれたような、虚を突かれたような心持ちだった。 私の脳裏には当時の姉が発した言葉の断片がじんわりと蘇ってくる。 「え~っと、そうだ。私の記念日もあるよ!!シヅコだから・・・」 ・・・・ そうか、そういうことなんだ。 「4/25から7/25へ」 姉もきっと私たちの記念日にまつわる話を覚えていたに違いない。 そう確信した私は、あわてて姉の書いたラブレターを読み返していた。 あ、もしかしてこれは横に読むんじゃなくて。。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加