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居間とキッチンを兼ねた現在私たちがいる部屋の他に、
トイレと風呂場をのぞくと、あと3~4部屋はありそうな感じだ。
いや、ホント立派なマンション。
「あの、しーちゃんの部屋に入ってみてもいいですか?」
部屋数の多さから姉の個室もあると判断した私は、
少し厚かましいかなと思いながらも幸雄さんにそう質問した。
幸雄さんと二人だけの空間に居心地の悪さを感じ始めたってのもあるし・・
「ん~まぁ、いいんじゃない?
黄色いネームプレートがかかってる部屋だよ。
オレはそろそろ夕飯の準備始めとくね。
志津子のやつ、なかなか帰ってこないなぁ。。」
幸雄さんの言葉は最後は独り言のようになっていた。
それで少し距離を感じた私は「手伝いましょうか?」の社交辞令も言えず、
仕事も料理もできるらしい姉の恋人に素直に感心するのみだった。
どっちも苦手な私が手伝ったってしょうがないよね・・・
内心でそんな言い訳をしながら、私は小声でささやくように返事をする。
「すみません、お願いします・・・じゃあちょっと、失礼します。」
居間から廊下へとつながるドアをなるべく音が立たないようにそろっと閉じたあと、
私は黄色いネームプレートがかかっているという姉の部屋を探した。
居間から廊下に出て右手前から二つ目のドア、姉の部屋はすぐに見つかった。
アヒル型に縁どられた黄色いネームプレートに“しづこ”と平仮名で書いてあり、
それがドアの上側に取り付けられたフックに紐でひっかけられているようだった。
「しいちゃんと私の仲だもの。勝手に入っても大丈夫だよね?」
そんな風に自分に言い聞かせながら、初めて訪れる姉の部屋へのそのそと侵入する。
もし私が同じことを姉にされたら、ここぞとばかりに腹を立てるのかもしれないが、
やはり妹ということで甘えがあるのか、こういう時は少し強気に出てしまうものだ。
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