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「お邪魔しちゃいまーす。」
わずかな罪悪感を拭い去るためにそう呟きながら、姉の部屋の中を見渡す。
しいちゃんの部屋は相変わらず小ざっぱりとしていてそつがなかった。
妹の私に比べると、頭もよくてしっかり者だったしいちゃんは、
あんまり無駄なモノを買い足して部屋を散らかしたりするようなタイプではない。
私がこの部屋に来ることは予想できただろうし、少しは片付けたりしたかもしれないが、
それでもこの整理整頓ぶりには歴然と生来の性格が表れているような気がした。
ふんわりとした手触りの薄い水色のカーペットに腰を下ろした私は、
見覚えのある品が点在する少し懐かしいようなその空間で、
無意識のうちに、ふぅっという大きなため息をついていた。
「ねこが大好きなアナタの楽園。猫又公園ニャンニャンランド!!」
ふと壁に目をやると、どこかの遊園地の宣伝用ポスターが貼ってある。
たぶん、しいちゃんはここで働いているんだろうな・・・
そんなことを思いながら、今度は勉強机の方に目をやった。
・・・あれ?
私は思わず首をかしげてしまった。
その勉強机は私たち姉妹が実家にいる頃からずっと使っていたものだ。
まったく同じ型の少しだけ色違いのバージョンを私も持っている。
私が不思議に思ったのは、その机の引き出しの一つがかなり開いていたからだ。
しっかり者のしいちゃんにしては、なんとなくだらしない気もしたが、
私の脳裏をかすめたそんな疑問符は一瞬で吹き飛んでしまうことになる。
開いた引き出しからそっとこちらをのぞく日記帳を見つけてしまったのだ。
「私たち姉妹の間には、秘密なんてあってないようなものだよね・・・」
もちろん自分でもかなり強引な言い訳だとは思ったが、
首をもたげた好奇心がそうそう消え去ってくれるものでもない。
私はおもむろにその可愛らしい装丁が施された日記帳を開いてみる。
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