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「あぁ?」
歩美が女子とは思えないドスの利いた声を挙げたと同時に、実景も少年の声の方へ顔を向けた。
そこに立っていたのは、実景より少し高いか同じくらいの身長をした少年であった。
実景の通う青葉中学から30分ほどの距離にある、青葉南中学の校章が付いた学ランを着ている。
少し大きいのだろうか、それとも暑いのだろうか(11月初旬のこの季節に暑いというのもいささかおかしいが)袖をまくり、更にはズボンの裾も折っていた。
見ようによっては小学生にも見えてしまうその少年は実景と目が合うと人懐っこそうに笑った。
「お前も学園都市行くんだろ?」
「……え」
「ほれ」
戸惑う実景を見越してか、少年はポケットへ手を入れると次の瞬間実景の胸にあるのと同じ形のブローチを前に突き出して見せた。
それは、まるで炎のような濃い赤をしている。
「俺達もその、学園都市? ark? っつーの目指してんだけど道わかんねぇし、お前もだろ?」
「あ、はい! ブローチ……してるんだけど道とかわかんな……って、俺“達”?」
見たところ、少年一人しか居ないようだが──。
実景が小首を傾げた時、今度は真後ろから──いや、上の方から静かな声が聞こえた。
「落とし物」
「はひぃっ!?」
少年との会話に集中し過ぎていたのか、はたまたこの声の主の影が薄いのかは分からないが、突如聞こえた声と目の前に突き出された物に実景は大袈裟に声を上げた。
「……うわぁ」
そして一息吐き、落ち着いた所で顔を上げればそこに在ったのはまるで『王子様』の様な少年であった。
自分も桜色という特異な髪色ではあるが、まず驚いたのは艶のあるブロンドの髪だ。
染めたのではなくて、地なのは一目瞭然であった。
それに加えて吸い込まれる様な青い瞳。
かっこいいという美的感覚は人それぞれにしても、恐らく誰も彼を不細工だとは言わないであろう。
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