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「まぁ、何考えてんのかは大体分かるけど、エリクも同い年だからな? 中学二年生な」
再び空気が固まる前に竜がエリクの肩を叩きながら笑った。
そしてふと何か気付いたように辺りを見渡すと首を傾げた。
「って、そういやあの女子はどした? ねちっこく絡んでた割にいつの間に──」
「声かけたら逃げてった」
竜の言葉にエリクが静かに口を開いた。
「顔真っ赤だったんだが……どうしたんだろうな?」
この瞬間、実景は歩美が逃げた理由がなんとなく理解できた。
歩美は酷く面食いな上に男子に弱いのだ。
恐らくエリクの顔を見て、かっこいい男子に自分の嫌な一面を見せてしまったことに気まずくなり逃げ出したのだろう。
そうでなければそのまま居座り竜にまで喧嘩をふっかけていたところだろう。
竜自身も整った顔付きではあるが、雰囲気が子供過ぎるのだ。
実景は歩美が消えた事を悟り、もうしばらく会うこともないだろうと安堵の息を漏らすと、改めて二人に向き直り笑顔で「ありがとう」と礼を述べた。
「いやまぁ通りすがっただけだし、そのブローチ見えたし……っつーかエリクがさっきの実景の落とし物拾って持ち主探すって……ってなんで実景のだって分かったんだ?」
「……特に理由はない」
エリクは特に顔色も変えずに竜へ言葉を返すと、腕に付けたシンプルな時計を一瞥した。
「9時30分か」
「学校間に合わないね?」
「危機感ねぇなお前ら……とりあえず歩くか、ここに居てもしょうがねぇし」
竜のその言葉を合図に、三人はようやく足を進めた。
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