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──しばらく宛もなく歩いていた三人だったが、このまま無闇に歩いていても仕方ないと裏通りに見つけた小さな公園に落ち着くことにした。
こんな誰も寄り付かないであろう小さな公園にしたのは、いくら転入案内があろうとこの時間に学生である実景達が歩いていては補導されかねないからである。
「そういえばね、赤星君のブローチ、実景のとちょっと違うんだよ」
三人並んで少し砂のかぶったベンチに腰をかけると、自分のブローチを手に取りながら言った。
片手に収まるほどのブローチは、丸型でシルバーの縁には透明な玉がはめ込まれている。
そしてさらに微かにだが、玉の中には花のような模様が彫られているようだ。
「あ、俺もそれ気になってたんだよ、エリクのも違うよな?」
「あぁ」
そう言って取り出した二人のブローチは大体の形状こそ実景のと一緒だが、竜の物は金縁に赤い玉、エリクのは銀縁に翡翠色の玉だ。
中に彫られている花の形も違うように見える。
「何か意味でもあるのかなぁ……」
もう少し中の模様をよく見てみようと、ブローチのガラスを太陽に透かしてみたその時──
「……っ!?」
ブローチが光を放った。
「実景!? お前何やったんだよ」
「わ、わかんないよ……!」
「分かんないわけねぇだろうが!」
竜と実景が光るブローチを手に余して、口論が勃発したその最中で、
「ひえっ!?」
不意に実景の体がブローチの光に包まれて宙に浮かんだ。
「桜月……!」
エリクは反射的に実景の手を掴むと、光はさらにエリクの体まで包んだ。
そして咄嗟に竜も実景の腕を掴んだその瞬間、光は一層の輝きを放って三人を飲み込んだ。
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