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──辺りを海に囲われた巨大な島。
ちょうどヒョウタンのような形になっていて、南方を向いている大きな円には中心に中世ヨーロッパの城を思わせるほどに立派な建物と、海の上だという事を忘れるほどに栄えた“街”が存在している。
こちらが俗に言う“学園都市”である。
一方、小さい方の円は同じ島だとは信じられないほどに薄暗く、廃虚に見紛うほどに寂れた鉄筋コンクリートのビルが一軒ポツンと立っているだけだ。
こちらは通称“ラボ”と言われ、限られた数名の者しか立ち入ることを許されては居ない。
そしてこのこの二つを海の上に浮かばせている大きな島──否、巨大な“船”の総称が“学園都市Ark”なのだ。
──学園都市Arkに通う、選ばれた数千人ほどの子供たちが未だ眠りについている明け方、普段は寒々しいほどに静まり返ったラボは慌ただしい空気に包まれていた。
「アホかああああああああ!!!!」
そしてとうとう、今まで黙視しているだけだった男性が声を荒げた。
「なんやねん、ブローチが指し示すーて! 今時コテコテの少年マンガでもそないにベタな中二病設定入れてこんのにアホか! お前アホやな!」
「いやーおもしろくないっすかぁー?」
「つまらんわ!!!!」
いつの間にか手にしていた大きなハリセンを駆使して、ヘラヘラと笑う青年を殴る彼の胸元には“馬男”と汚い字で書かれたネームプレートが安全ピンによって止められている。
とても名前だとは思えない一文ではあるが、少し浅黒い肌に、焦げ茶で長めの髪を後ろで束ねているその風貌を見れば、彼の名前が“馬男”だと言ってもさほど違和感は感じないだろう。
一方、殴られている青年はネームプレートを付けては居らず、代わりに胸元には学園都市Ark大学院生の証である金バッチが輝いている。
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